ドイツに住み始めた当初、長男の登園で出かけるときによくやっていた失敗があります。それは、薄着。
鳥取では、朝起きたときの室温で、だいたい外の寒さが分かるので外気温に応じた服装ができていました。しかし、渡独してみると、24時間室温が暖かく一定なので、外の寒さのことを微塵も想像できず、ついついTシャツに上着程度の薄着のまま出かけてしまうのです。
集合住宅のエントランスを出たとたん、4月とは言え最低気温が5℃という日も少なくないドイツで、その寒さに驚き慌てて部屋に戻り服をもう1~2枚重ね、幼稚園に遅れる…という失敗を何度かしていました。
一般的な日本の家のように、例えば、リビングが暖かくてもトイレや洗面・脱衣所は寒いとか、ストーブの前だけは暖かいけれど窓の近くは寒い…、だったら外気の寒さも意識できるのかもしれませんが、とにかく本当に家中どこでも一定で温かいのです。
当時も現在のように国際的な物価高で、しかも円安(円建ての給料)で収入が目減りしていて暖房し過ぎないよう気を使っていたのですが、それでも室内の温度が一定で寒さ知らずだったのです。
その頃の私は、トリプルガラスで高断熱の木製サッシの窓とか、外壁材や集中ボイラー(熱システム)とか、貯湯タンクが屋内にあったり、配管(5㎝くらい)の大きさに対して断熱が半端なかったり(30㎝くらい!)、そもそも建築物の断熱気密性能が法律で高く定められているなんていう事には無知でした。
帰国して温暖化対策に関わる仕事をし始めて、そういえばドイツでは確かにそうだったなと、暖房便座が無い理由も、湯船が浅くて肩までお湯につかれない理由も納得したのでした。全ては建物の省エネ(断熱気密)基準があり、室内の温度差で健康や命を失わせない、そしてエネルギーをなるべく海外に頼らないですむための法律や政策があるからだと知ったのです。
地球温暖化対策いわゆる脱炭素(ゼロカーボン)社会づくりは、次世代との約束です。この約束を果たすことが、子どもたちの幸せを願うこと、エシカルな子育てや生き方だと確信しています。
今、鳥取県は、NE‐ST(とっとり健康省エネ住宅制度)などで、ドイツに負けない性能を持った高性能住宅を増やし県民の暮らしを守ろうとしています。
もし、あなたが冬の朝、暖房をつける前に布団の中で外気温も想像できる家に住んでいるのなら、ぜひNE‐STを思い出してみてください。