第5回 子どもの訴えに気づいていますか?

今回答えてくれるのは―

一般社団法人 みんなの実家 代表理事 津村 雄一さん

『ともに生きる、ともに学ぶ、ともに笑う』をモットーに、地域密着型サードプレイス事業として地域食堂やフリースクールなどを展開。中学校の教諭時代に得た気づきから、誰でも立ち寄れる交流の場をつくり活動しています。

 

地域コミュニティ「みんなの実家」は、鳥取市に拠点を構えてもうすぐ2年になります。平日のランチタイム「みなよし食堂」は口コミで訪れる人も増え、私たちスタッフがお子さんを見守りながらお母さん達はゆったりと過ごされています。時には出会った人同士が新たなつながりを作ったり、自分なりの居場所づくりにチャレンジしていく様子が見られとても嬉しいです。ですが、利用者さんの中にはさまざまな問題や悩みを抱えている方もおられます。そんな時にも私たちが関わりの中で問題に寄り添い、前向きな心持ちになれるようケアすることも大きな役割だと感じています。

 

今の時期、ご家庭から多い相談があります。不登校や不登園です。連休が続くと心地よい「家」という居場所から離れた集団生活が苦痛に感じる子どもが増えているようです。真面目で優しいタイプほどこの傾向があります。多くの親は子どもの行動や訴えに戸惑うことでしょう。そんな時、私が皆さんに伝えているのは、子育てや躾は、子どもの個性によってアプローチの仕方は様々だということです。

 

中学校の教諭として勤務していた頃、その14年間で何度も子どもの心に触れた瞬間がありました。例えば、ある日の給食時間。委員会の当番で教室にいなかった女子生徒が、戻ってきたら配膳をされていなかったことに気づき、感情に任せて大暴れをしたことがありました。それまでも指導が入ることもしばしばある生徒だったので、その瞬間だけを見たら彼女は「問題児」となるわけです。しかし、本当にそうでしょうか。この時、私は彼女を責めませんでした。「用意しなかったことに気づいていなかった先生が悪かった、ごめんな」と謝りました。誰だって仕事をしてきて自分の食事だけ忘れられたら、傷ついたり嫌な気分になるのは当たり前です。(配膳を忘れた生徒も悪気があったわけではありません。)問題とされていた彼女のこれまでの行動の数々は、共感をしてもらえないことへの反発であることも多かったと思います。そのことがあってから、彼女は私が一人で教室の掃除をしていると手伝うようになり、顧問でもない私に、部活の試合を見に来て!と誘ってくれるようになりました。傷ついた心に気がつくこと、行動に誤りがあっても人格を否定しないこと、大人も誤りがあったら認めることで心を開いてくれたのです。

 

これは皆さんのご家庭ではまだ先の中学生の話ですが、幼児期にも同じような場面は少なからずあるのではないでしょうか。大声で騒ぐから叱る、わかってないだろうと決めつけてしまう、ついうっかり人格を否定するような言葉を投げかけてしまう。このような子どもの心を軽んじてしまう日常の積み重ねが心にくすぶり続け、思春期にも影響を与えると私は思います。親は必ずしも正解ではありません。子どもの思いに耳を傾けてみて下さい。

また、コロナ禍を過ごした子どもたちは行動が制限されたこともあり「自分の気持ちを伝える」「相手の言うことを聞く」などのコミュニケーションが苦手な傾向にあります。子どもは0〜1歳で積極的にスキンシップをとり社会性を身につける土台として親子の信頼関係を築き、そして4~5歳になったら様々な人と触れ合う体験を積み重ねて社会性を身につけることが大切です。特別な機会を設けなくても、近所を散歩をしたり、私たちの食堂に立ち寄っても良いかもしれません。

 

外に積極的に連れ出すことで子どもにとって社会性を育む体験となり、また、親にとっても他者と関わりながら息抜きができる環境があれば子育てに余裕が生まれます。私たちの地域コミュニティ「みんなの実家」は、そんな乳幼児期から思春期へと続く親御さんの悩みやお子さんの生きづらさに寄り添った居場所として、これからもあり続けたいと思います。

 

 

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