第4回 主体性と自主性

今回答えてくれるのは―

認定NPO法人 ハーモニィカレッジ 理事長 大堀貴士さん

空山ぼくじょうようちえん『ぱっか』には現在2~6歳の子どもたちが通っています。見たり、聴いたり、触れたり・・そんな環境に囲まれた子どもたちの発想は実に様々です。
ここでは大人の価値観にとらわれず、あるものの中から自分の感覚を刺激することを見つけられる教育を主軸にした保育を行っています

 

 

昨今ようやく、子どもが身に付けるべき力に「主体的に考えられる能力」が必要だと言われるようになりました。

私は子どもたちには「主体性」のある大人になってほしいと思っていますが、「主体性」と似た言葉に「自主性」というものがあります。この二つはよく混同されますが実は全く違っています。分かりやすく例えると「自主性」はゴールが決まっているものに自ら取り組める力、「主体性」は自らゴールを決める力、なんですね。

 

子どものころの「〇〇をしなさい」「それをしてはいけません」という声かけに、子どもたちはどう感じているでしょうか。自分の感情よりも大人が求めていることに対してどうしたら褒めてもらえるか、怒られないのかと、大人、他人が満足する答えを探そうとしてはいないでしょうか。その状況が当たり前になってしまうと、答えを示してくれる大人たちがいるときはいいけれど、それを示してくれる人がいないと、「何をすればいいの?」となってしまいます。失敗をした時にも「〇〇の言う通りにしたのに」って他人軸になりますよね。しかし、自らゴールを決める「主体性」があれば、失敗してもトライアンドエラーで、ダメだったらこうしよう。と上手くいったことにはもちろん、上手くいかなかったことに対しても自分自身が決めたことなので納得感があります。大人になったら必ずしも正解があるわけではないので自分で考える必要があります。

 

例えば『ぱっかの牧場』ではこんなことがあります。ここでは乗馬や馬のお世話などをして時間を過ごすのですが、ときに馬小屋の掃除ができていないこともあります。そんなとき私はよいきっかけだとばかりに、子どもたちの前で削蹄※を始めます。するとそれを見た子どもたちは「なんでそんなことをしているの?」と聞いてきます。「馬たちの蹄でちょっと腐ってる部分があるんだ。もっと蹄が悪くなったら生きていくことができないかもしれない」と答えます。すると子どもたちは「えっ!どうしたら元気になるの?」と心配そうに尋ねます。私は「馬小屋がきれいであること、蹄の掃除をしっかりしてあげること、適度な運動、それがあって馬は健康でいられるんだよ。みんながいつもきれいにしてくれている馬小屋だけども、この子は運動が足らなかったのか掃除が足らなかったのかな、なんでだろうね。」と。そうすると子どもたちは自分たちにできることは何か、と馬小屋の掃除や蹄のチェックを自ら率先してやるんです。「これで大丈夫かな?お馬さん元気でいられるかな?」って。

 

こちらが指示しなくても、子どもたちは気付いたらやるんです。子どもたちの行動力は自らが感じたことに対しては大人が思ってもいないパワーを発揮します。「言って聞かせる」ではなく、親は子どもが失敗を含めたその経験を見守ることが必要です。「感じたことから生まれる行動」はいつも自分が主役です。

 

今、AIの発達やコロナ社会など私たち世代の常識とされた20年前からは想像も出来ない大きな変化の時代を迎えています。自らの人生を自分らしく生き抜く力は子どもたちの武器となります「主体性」の本質に寄り添いながら導いていくことが、大人たちに求められているのではないでしょうか。

 

※蹄(ひづめ)を切りそろえ、整えること

 

 

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