ドイツに住み始めた頃、「なぜドイツ人は 障がい者が多いんだろう」といつも不思議 に思っていました。
車椅子に乗っている人 をよく目にしたからです。
バスでも電車で もどこにでも見かけるし、車椅子のまま介助無しで器用にエスカレーターを上って (ドイツでは車椅子やベビーカーもエスカ レーターで昇降することが多かった)行くし、とにかくアクティブな印象でした。
同じような頃、ベビーカーを押して電車 に乗って初めての街に買い物に行こうとし たことがありました。
車も持っていたので すが、駐車場代よりも公共交通の運賃の方 が安い(一日乗り放題の家族カードが50 0円くらい)のと、車だとベビーカーを畳ん で運ぶ必要がありますが、公共交通だと畳む必要がないので楽ちんだと思っていたか らです。
しかし、その初めての駅にはホーム にエレベーターもエスカレーターもなく、駅から出るには階段を降りるしかありませ ん。
ベビーカーには赤ん坊とけっこうな量 の荷物も乗せていたので途方にくれてしま いました。
すると、通りがかりの人が赤ん坊 の乗ったままのベビーカーをよいしょと抱 えて階段を降りてくれたのです。
特に親切 そうな雰囲気ではなく、急いでいるのに… という感じの険しそうな表情だったので、 むしろそうすることが当たり前なのだとい うことがわかりました。
そこでやっと、ド イツに車椅子に乗った人が多いことが理解 できました。公共交通などのインフラが障がいのある 人にも子育て中の人にも誰にとっても使い やすく、また困っている人には助け合うの が当たり前だから、介助無しでもアクティ ブに車椅子で出かけることができるので す。
もしかすると日本にも障がいのある方 はたくさんいらっしゃって、社会的なイン フラや人のマナーが整っていればもっと外 に出かける機会も増えるのではないか、逆 に言えばインフラが整っていないから出か ける機会を奪われている方も多いではない かと考えさせられました。
ある時、市役所の人に「公共交通の料金がこんなに安いと赤字になるのでは?」と聞 いてみました。
すると、「移動の権利は誰に でもあり、それを保証する公共交通は福祉 です。なので利益や赤字という考え方はし ません。財源は、シュタットベルケ(公社の ような地域の会社)の自然エネルギーの売 電益でまかなっていて、それもあって当然、 市民も地域エネルギー会社から電力を買っ ています。」とのこと。
今、日本でも盛んなエ ネルギーの地産地消。地域エネルギー会社 から電気を買えば、CO2も出さないし、循 環するお金で公共 交通る推進できる と言うのです。私が誤解してい た「障がい者が多い ドイツ」はそんな一 石何鳥にもなる街 づくりの進んだ国 でもあったのです。