ペンネーム:しあわせたろう
一才のお誕生日おめでとう。
たくさんの幸せを与えてくれてありがとう。
この一年を濃く長く感じる一方、生まれた日のことは昨日のように思い出すことが出来る。
あの頃、世界的に猛威を奮う新型コロナウイルスの影響で、全国に緊急事態宣言が出されていた。 生まれた瞬間を写真に残したく立会い出産を希望していたが、感染対策のため叶わないと産院から連絡があり諦めていた。
だが、緊急事態宣言が段階的に解除されていることから、ある日から立ち会い出産が可能になるという。
その日は出産予定日から三日後だ。
その日までお腹の中に居て欲しいと願う反面、自由に好きなタイミングで生まれて来て欲しいと思い、毎日ドキドキしながら過ごしていた。
そしてなんと立ち会い出産が可能になった日の午前、やわらかい光に包まれ、泣き声とともに生まれてきてくれた。 生まれた瞬間をしっかり写真に残すことが出来た。 ほっとしたのも束の間、上手く呼吸が出来ず大きな病院のNICUへ救急搬送されることに…。
誕生したばかりの身体に呼吸器や管が通され、心配で心配で胸が張り裂けそうだった。 だが指先に生えている小さな爪が、すでに長く伸びてるのを見て、この子の生命力は強い、きっと大丈夫だと感じた。
父親としての自覚が芽生え、使命感を感じた瞬間だった。
それから救急車を追いかけ医師からの説明を受け、入院の手続きをした。コロナ禍で面会時間は一日15分しか叶わなかったが、退院の日まで毎日病院を往復した。 搾乳した初乳を届け、抱っこもした。会いに行くのが楽しみで毎日わくわくした。
三日後に退院し産院に戻り、ようやく家族三人が揃った。 それからありがたいことに日々健やかに成長してくれている。 毎日がドラマだ。
体重は生まれたとき3倍を超えた。姿、声、感触、匂い、一瞬たりとも忘れたくなくて毎日のように写真におさめている。
毎晩眠った後、寝顔を見ながら今まで撮った写真を見返すのが一日の終わりの習慣。
望んで望んで誕生してくれた命。
私たち夫婦の元に生まれてきてくれてありがとう。
*ここで紹介しているエッセイは「産後ケアやわらかい風」が発行している「やわ風の吹く処」に寄稿されたものです。