第3回 子どもの「できない」をどう受け止めればいいの?

 

今回答えてくれるのは―

鳥取市立宝木小学校 校長 田中幸子さん

 

私の一日は、毎朝玄関前で子どもたちを迎えることから始まります。
秋になると玄関前庭の落ち葉掃きをしながら迎えます。いくら掃いても、後から後から落ちてくるので、一向にすっきりときれいにはなりません。風が吹くと、さらに落ち葉が舞って…また元に戻ってしまいます。その後学校を訪問された方は、「掃除しないのかしら」と思われるかもしれません。見えるのは落ち葉だらけの玄関ですから仕方ありません。

 

 

子どもの成長も同じだと思うのです。毎日どんなに頑張っても、見える(できた)ところはそれほど変わりません。できていない部分の方が目についてしまって、イライラしたり不安になったり…。それまでの過程や頑張ろうと思った心の中は見えません。そして残念なことに、見えないところには人は気づきにくいので、ほとんど褒められることはありません。
「○○はしたの?早くしなさいって言っているでしょう。どうしてできないの。何回同じことを言わせるの」と、私も我が子に言ってきました。毎日仕事や家事でくたくたのお母さん、お父さんのお気持ちは痛いほどよくわかります。できていないことばかり見えてしまいます。でもね、子どもだって、決してさぼっているわけではないのです。
 

 

ちょっと子どもの視点で声かけをしてみませんか。「今日の予定は?」と聞いてみてはどうでしょう。小さい子の場合は、「これとこれ、どれからしたい?」と聞いてみてもいいかもしれません。そうすると子どもは自分の頭で考えます。「言われたことをやるではなく、自分で決めたことをやる」になるのです。これは大事な力につながります。時には、遊びに夢中になって、やるべきことが後回しという日もあるかもしれませんが、やり遂げれば順番は関係ありません。もしできてなくて困ったことになっても、その経験も無駄ではありません。

 

 

親はどうしても子どもが困らないように先回りしてしまいます(私もそんな親でした)。そして、言ったようにできないことにイライラし、ついには怒ってしまいます。でも、できていないことばかり見るのは、お互いにストレスが溜まって苦しいです。できていることに目を向け、認められると嬉しくなります。また、できなかったことには子どもなりの理由があるはずです。自分の言葉で理由が言えたなら、それも大事な力です。たとえ呆れるような理由であっても。そして最後は、できなかったことを一緒に解決すると、「結局は手伝うってことじゃない」と思われるかもしれませんが、気持ちが前向きになります。子どもにとって大人はできないことを叱る存在ではなく、応援してくれる存在になります。自分で決めて、「小さなできた」の積み重ねが、自信につながります。
 

 

残った落ち葉ではなく、集めた落ち葉を見てささやかな達成感を味わい、「続きはまた明日」です。なぜなら、これはずっと続くから。来年は一回り大きい木になって、さらにたくさんの葉をつけて、また同じことの繰り返しです。でも、春には花で、新緑の頃は爽やかな香りで、暑い夏には木陰で、秋には紅葉で皆を和ませてくれます。
落ち葉は尽きないけれど、幸せを感じます。

 

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