[インタビュー]子どもの「心」と発達障がい(後編)

発達障がいは、身近にありながら社会の中であまり知られていない障がいでしたが、近年、特性に応じた診断をされる子どもが増えています。実際に幼稚園保育園では周囲と同じように生活を送ってきた子どもが、小学校に上がるタイミング、または進級時で診断名がつけられるケースも多くみられ、疑問や不安を抱える保護者も少なくありません。

子どもの心専門医であり、虹の森クリニックを運営されている坂野真理先生に、発達障がいについてお話をお聞きしました。

(前編はこちら)

坂野真理 虹の森クリニック

Q:個性に対して寛容ではない社会は、本人だけでなく親にとっても生きづらいものですね。

坂野 クリニックに来られる親御さんの中には、この子がみんなと違うってなった時に、「親がちゃんとしてないからじゃないか」とか、「もっと厳しくしなさい」って責められちゃったりしてきている。でも、親としては「こんなに大変な思いをしているのにうまく子どもをコントロールできないなんて」って悩むわけです。そこで「発達障がいですよ」って診断されることで、「そっか、じゃあみんなと同じじゃなくていいんだ」ってホッとされる保護者さんもあると思うんですね。

ただ、私はそれでいいのかなっていう疑問はあります。だって子育てって大変なんですよ。手がかかる子もかからない子もいるし、いろんな子どもの個性があるのは当たり前じゃないですか。それは親の(しつけ)(に限らずあるんですよ。こちらから診断名をつけてあげないとそれが認められない社会っていうのは、私自身同じ子育て世代としてはつらいですよね。

生きづらい社会のなかで、私たち大人は子どもたちに何をしてあげられるでしょうか。

坂野 それぞれのペースを尊重してあげるっていうことだと思います。

 たとえば、走るのが苦手な子は、得意な子の何倍も努力してもちょっとしか早くならないとかっていう場合もありますよね。結果、差は開いている。そこでもっと頑張れっていうことじゃなく、この子はここからスタートしてここまで来たんだから、その過程を認めて、褒めてあげようねっていうことでいいと思うんです。走るだけではなく、すべてのいろんなことに通じることなんですけど、その子なりの基準で頑張りを認めてあげるような接し方をしてほしいですね。親以外の周りの人は、つい頑張れ頑張れと言っちゃうこともあるかもしれないんですけど。

Q:坂野先生のブログの中で「様々な人種がいて、言語も宗教も違う人々が集まる場所ではそもそも小さな違いは問題にはなりません」とありましたが、国や環境が変われば個性に対する考え方の違いも随分と変わってくるものなんですね。

坂野 そうですね。発達障がいっていうのはできない部分もあるけどできる部分ももちろあるし、それって障がいのあるなしではなくて全ての人に言える事で、困りごとや不安感などの子どもの心の問題自体にもっと焦点をあてるべきなんですよね。

Q:保護者や教育者も子どもへの受け止め方を変えていかなければいけませんね。

坂野 保護者や教育者というよりも、実は、それって我々医者などの専門家が「発達障がい」そのものばかり見ていて、その先にある「子どもの心」への視点を持ってないんですよ。そういうふうにしかトレーニングを受けてきていない。だから、支援者側にも行きわたっていない。そこからして問題なんですよね。「発達障がいじゃないけど不登校になっている」っていう場合だって、例えば、支援学級に入れるなどの支援が受けられればいいけど、そもそもそんな制度がないですし。発達障がいの有無ではなく子どもの心を支援するっていうふうなあり方に変えていけたらいいなあと思っているところです。イギリスにも昨年クリニックを開院したので、そういったことを日英両国からこれからも発信していきたいですね。

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