いのちの誕生の瞬間を見つめてきた助産師が今伝えたい性の実態【後編】

思春期の性、パートナーとの性、子をもつ親としての性。人として生きていく上で一生つきあう「性」ですが、普段の生活の中では秘め事として誰かに相談する機会はないという人が多いのではないでしょうか。一方で多くの人が問題を抱えている実態も。子育て中のママも他人事ではありません。自分自身、そしてわが子を守るために性のリアルを知ることで見えてくる子育てとは?

産後ケアやわらかい風の代表川口映子さんと、ベテラン助産師さん3名にお話を聞いてきました!

前編はこちら

子どもたちを取り巻く性犯罪も増加しています。子ども自身にどのように「性」を伝えたらいいでしょうか?

K子さん 今いろんな事件があるなかで、こうしなさい、とか、実際に自分の孫に性犯罪に巻き込まれないためにどんな風にいい聞かせて伝えたらいいかというのは悩むところ。


S代さん 嫌という気持ちを大事にすることを伝えるけど、理解させるのは難しい。

T美さん 最近は、小さな子どもには『水着で隠れているところと口は大事なところだから他人に見せない触らせない』っていう表現をするようになりましたけどね。

「水着で隠れるところと口は大事なところ」。知らなかった!っていう親御さんも多そうですね。

川口さん 一部の人しか知らないでしょう?私は家庭でもそうだけど、今学校でどういうことを教えてるのかな、っていうのは疑問に思う。っていうのが、さっきの進学校の女の子もそうだけど、10代や20代の若い子たちがなにも自分たちの体の事をわかっていないと感じることが多い。実は鳥取県は今まで妊娠中絶率が日本でワースト1、2を争っていて(※1)、同じように中絶率が高かった秋田県は医師会と県が連携して性教育に力入れて成果も出ている(※2)。だから鳥取県も何かそういう教育現場での積極的な取り組みがあれば変わると思うんだけど。実感としてはちゃんと伝わっているのか疑問。

S代さん 10年くらいまえになるけど、避妊の仕方を具体的に教えようとした指導者が、学校側からそれはやめてくださいと言われて困ったというのを聞いたことがある。


K子さん 寝た子を起こすなっていうことね。(苦笑)

川口さん もし今まだそういう考え方の先生がいるならそれこそ問題だと思う。「妊娠SOS」での相談でも、生理が来てません、なんかできちゃったみたいで、ってくるけど、その理由が相手が避妊をしてくれなかったから、っていうのは多い。男にまかせっきりなんじゃないかな〜と感じる。女しか妊娠しないんだから、もっと主体的に自分の体を守らないと。でもそんなこと、もしかしたら家庭でも学校でも教わってないかもしれない。だから、性教育ってどうなってる?って。

寝た子を起こすな、という表現がありましたけど、興味を持つような年ごろになって始めるからそういう危機感を持ってしまうのなら、もっと低年齢から始めようっていう流れにはならないんでしょうか?


S代さん そう、それはずっと前から言われているけどそうならない。


K子さん 小さなうちから、男の子と女の子の体の仕組みや違いとかっていうことの前に、自分の体を大事にしていこう、っていうことをまず始めていければいいんだけど。


S代さん 「ついていかない」「逃げる」とか基本的なことも教えていかなきゃね。

川口さん それに、子どもが大きくなってくるといろんな出会い系とかデートDVとか性被害って多岐にわたってあるけど、そういったものへの危機感を感じてほしい。家庭でもそうだけど、教育の場でもタブー視されているから望まない妊娠をしても親にも言えないし、こうやって電話がかかってくる。もっと小さい時からいろんな場面で性教育のことを話題にできるような社会になってもらいたいし、性感染症に対しても、漠然と怖いというだけではなく正しい知識として持っておくことは必要だとおもう。K子さん 他人事ではなく自分事としてね。


T美さん 親ですら他人事のことがありますからね。望まない妊娠をする子どもの親って、あまり子どもに関心がないっていう場合もけっこうあるんじゃないかなって感じますよ。子どもの様子や変化に気付かないし。妊娠してしまって出産して頼っても出て行ってくれっていう場合もある。そういった場合、その子の子どももまた同じようになってしまうケースが見られるのが残念。


S代さん どうしても悪いほうに連鎖してしまいがちなことよね。


川口さん 人間の本能である欲って食欲とか睡眠欲とかいろいろあるけど、性欲も同じようにもっと皆が考えられるようにできたらいいなって。幼児なら幼児なりの、小学生なら小学生なりの性教育ができたらいいな。そうすればもっと自分と相手を大切にすることを考えられる社会になるし、性被害や産後の夫婦間の問題も減るんじゃないかと思う。

やわらかい風さんには、悩みを抱えている10代の学生から産後のお母さんまでたくさんの女性が頼ってこられていますよね。


川口さん 「妊娠SOS」での相談でも感じるけど、自分の思っていることを言葉に出すことになれていない人が多いと感じます。


S代さん そういった意味では電話をかければ誰かが話を聞いてくれたり相談にのってくれるっていうのは大きな力になると思うし、若い人も産後のお母さんもデイに限らず困ったらこんなとこあるよって紹介していきたいね。

K子さん つなげるのが私たちの仕事だしね。

川口さん 私思うのは、中絶率がトップクラスだけど一方で少子化があって、それって矛盾してるんだけど、性教育の延長線上にある産後のお母さんのケアがもっと必要だと思う。子どもを産みたい育てたいっていう気持ちになる社会や環境になってほしい。困ったらここにおいでって気軽に受け皿になれる場所が増えていって欲しいし、「やわらかい風」はそうありたいですね。


※1 最新データでは2018年度の鳥取県人工妊娠中絶率はワースト5位。
※2 秋田県では、1990年代、10代の人工妊娠中絶率が全国平均より高い値であったことをきっかけに性教育に力を入れ始めました。性に関する指導を行い、人工妊娠中絶率は半分以下(2011年には中絶率が3分の1)にまで減少、結果的に全国平均を下回り、性感染症も減少させるという成果を上げました。

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