第5回 空と海のむこう

ペンネーム:とみちゃん

 

この世にはいないけど・・・私には、大切な二人の子供がいます。

一人目は「空(そら)」、二人目は「海(うみ)」と言います。

妊娠初期での流産でした。

 

今、私の腕の中で眠っているのは、三人目の男の子です。

 

子供の誕生は、妊娠すること、お腹の中で命が育つこと、産まれてくること・・・奇跡の連続です。

 

息子を身ごもった時、嬉しさよりも大きな不安を感じました。空と海のときのつわりの経験から、「そろそろ重いつわりが来る」と分かりました。

 

その後、一ヶ月以上、重症妊娠悪阻で入院することになりました。異常なほど赤ちゃんを心配し、母体でしか守ることのできない命に重い責任を感じていました。

 

 退院後、仕事に復帰しましたが、つわりは妊娠中期に入っても続きました。何か体がおかしい、うまく表現できないけれどしんどい、でもそれを認めるとしんどさが増す気がして毎日を気合いで乗り切っていました。もちろん、赤ちゃんが一番大事です。でも、仕事も責任をもってやっています。私にとってはどちらも大事で、どうすればよいか分かりませんでした。女性の社会進出が進んだ今だからこそ、妊娠と仕事を両立する難しさを痛感しました。

 

 そんなとき、突然、難病の診断を受けました。妊娠中なのに薬が始まってしまいました。赤ちゃんに薬がよいわけないです。自己判断で薬をやめたこともありました。

 

 つわりが終わらないまま、半年が経ち、臨月を目前に、少しだけ症状が和らいできました。半年ぶりに、食べたいものを食べたり、出産に向けて運動をしたりと、マタニティライフを楽しみ始めた時、「赤ちゃんが小さい」と言われるようになりました。

 

 2回も赤ちゃんを亡くしてしまった自分の子宮の環境と、薬を飲み続けている自分の身体に自信がもてず、赤ちゃんが生きて産まれてきてくれることを毎日祈りました。

 

 妊娠9か月で、胎児発育不全の診断を受け、誘発分娩をすることになりました。4日間かけて陣痛を誘発したものの、胎児心拍の低下で、緊急帝王切開となりました。

 

「ふにゃーん、ふにゃーん」という女の子のような産声を聞いた時、「これが奇跡だ・・・。」と思いました。自然にかけた言葉は「頑張ったね。しんどかったね。」でした。今でも「お腹の中でしんどい思いをさせてごめんね。」というのが正直な気持ちですが、それ以上に、愛情たっぷりの子育てをしていきたい気持ちが満帆です。

 

 あなたはいくつもの奇跡が重なって産まれてきた子です。ずっと待っていたよ。誕生おめでとう。

 

 

*ここで紹介しているエッセイは「産後ケアやわらかい風」より提供されたものです。

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